閉じる

「生と死」の物語、観客の共感呼ぶ 東松島で朗読劇 市内の小学生も熱演

 東日本大震災から9年後に再会した幼なじみと「ボク」が海を見ながら交わす会話で構成した朗読劇「逢わせ鏡-陽炎(かげろう)-」が1、2の両日、東松島市野蒜の市震災復興伝承館であり、「生と死」を見つめた物語が観客の共感を呼んだ。

 同市を拠点にするボーカリストでマルチアーティストのSAKUYA.さんが母校の大曲小時代や震災前後の体験を織り交ぜて書いた作品で、初演は2021年。会場には津波で被災した旧野蒜駅を整備し開設した同館を初めて使った。

 朗読劇には同市在住のフリーアナウンサー久保田祐子さんが初めて出演したほか、市内の小学5年生「ころころ」(ニックネーム)さんが初参加、SAKUYA.さんと共演した。

 大曲小講堂にあった合わせ鏡を、会いたい人に会わせてくれる「逢わせ鏡」と思い込んでいたSAKUYA.さんの思い出を取り入れた物語でもあり、スクリーンに古里の風景や校舎などを映しながら3人は約70分熱演、「悲しみは消えないかもしれないが、自分なりのペースで歩んでいけばいい」といった言葉に涙を流す観客もいた。

 初日に訪れた久保田さんの父・久保田優さん(73)=同市=は「朗読劇が持つ力に感動した」と話した。

 SAKUYA.さんは「作品が古里を思い出す時間になればうれしい。震災から復興への歩みを知ることができる伝承館で上演できたことに意味があった。震災後に生まれた小学生が加わったのも大きい。震災を語り継ぐ仲間を増やしながら、誰かの心に寄り添える作品に育てていきたい」と語った。

関連リンク