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岩手・大船渡の山林火災 足場悪く必死に放水 2次派遣隊・石巻消防本部阿部さん

大船渡の森林火災と石巻の事例を振り返る阿部消防司令
大船渡市赤崎町の長崎漁港付近の山林。火の手が帯状に迫っている=3日午後9時ごろ(石巻地区消防本部提供)

 岩手県大船渡市で2月26日に発生、炎上中の大規模山林火災の現場に、石巻地区消防本部は緊急消防援助隊を派遣している。3月1~4日、2次派遣隊を率いた石巻東消防署の阿部宏彦消防司令(43)が5日、三陸河北新報社の取材に応じ「火の手が帯状に広がり、山を下るように民家に迫っていた」と緊迫した消火活動を振り返った。(相沢春花)

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 阿部消防司令は消火隊3隊、隊員12人で、後方支援隊とともに1日早朝に石巻を出発。塩釜・黒川消防が所属する宮城県大隊塩釜ブロック消火隊長として、大船渡市赤崎町合足(あったり)地区に出動した。

 「山のあちらこちらでたき火のようにパチパチと音が聞こえる」。現場に近づくにつれ、煙が見え始め、既に燃え尽きた家を横目に先を急いだ。

 合足地区の山あいには十数軒の民家が立ち並び、すぐ裏の山の斜面から火の手が上がった。ホースでの放水に加え、ホースが届かない場所は18リットルタンクを背負い手動で水を噴射した。

 「消火には海水を使った。近くに水源があるのは強みになった。だが、足場が悪い斜面での活動は体力を奪い、滑落やけがの危険もあった」と山林での活動の難しさを挙げた。

 2日午前2時。「昼に消した所から煙が見えた」。小さなヘッドライトを頼りに、重なった落ち葉の中でくすぶる火に水をかけ続けた。「少しでも住民の不安を取り除くことができれば」と懸命な消火活動は昼まで続いた。

 夜から、火の手が迫り始めた同町の長崎漁港付近で活動を展開。「毎日、目に見えて延焼が拡大した。家への延焼を食い止めたい一心だった」と振り返る。

 4日、3次派遣隊に引き継ぎ、石巻に戻った。「隊員が誰もけがをせずに帰ってこられて安心した。わずかばかりだが、消火に貢献できていれば幸いだ」と話し、「鎮火、鎮圧する最後まで協力していきたい」と力を込めた。

19年、石巻でも大規模森林火災

 石巻消防本部管内でも2019年1月20日に大規模な森林火災が発生。石巻市鮎川浜万治下の市所有山林など約2ヘクタールが消失した。消火活動には県内各地の消防が応援に駆け付け、発生から約24時間後に鎮火した。

 同本部予防課の浮津貴光課長補佐は「教訓は署員で共有し、防災ヘリとの合同訓練などを通して常に備えている。石巻地方でも条件がそろえば大規模な山林火災が発生する可能性がある」と指摘する。

 「林野火災の原因は人為的なものが大半を占め、たき火や火入れ、たばこなどが火元となる。市民の方々はより一層、火の取り扱いに注意してほしい」と呼びかける。

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