記憶つなぐ 東日本大震災きょう14年 石巻地方3市町、行方不明696人

東日本大震災は11日、発生から14年となる。石巻地方では関連死も含めて約6000人が犠牲になった。追悼行事が各地で開かれ、亡き人への祈りが広がる。
復興のハード事業はほぼ終わったが、孤独を強める被災者の見守りや心のケアの必要性は変わらない。国の第2期復興・創生期間は2025年度まで。時が流れれば記憶は風化する。伝承活動はその重要性が年々増す中、見直しを迫られている。
「行方の分からない人が石巻だけで400人もいるんだよ」。石巻市湊の法山寺幼稚園(園児63人)の北村暁秀園長(52)がそう話すと、園児たちは「えー!」と驚きの声を上げた。
6日に実施した慰霊行脚。震災で何が起きたのかを園児に伝えながら、北上川の堤防や石巻南浜津波復興祈念公園を歩き、海や川に向かって合掌した。園児たちは強風に負けず、手を合わせながら歩を進めた。
「震災後に生まれた子どもたちが増えている。身をもって何かを感じてくれたら」と北村園長。合掌で静かに目を閉じていた年長の渡辺莉帆ちゃん(6)は「優しい気持ちで手を合わせた」と話した。
記憶を途切れさせず、教訓を守っていく。小さな一歩をつないで。
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【東日本大震災の主な被害状況(2月28日現在、県まとめ)】
=単位は人、棟、人口は2010年国勢調査
人 口 直接死 関連死 行方不明 住家全壊 住家半壊
石巻市 160,826 3,277 276 417 20,044 13,050
東松島市 42,903 1,067 66 22 5,519 5,558
女川町 10,051 593 22 257 2,924 349
県がまとめた震災の被害状況(2月28日現在)は表の通り。
震災犠牲者は、石巻市が直接死3277人、関連死276人の計3553人で、行方不明者は417人。東松島市は直接死1067人、関連死66人の計1133人で、行方不明は22人。女川町は直接死が593人、関連死22人の計615人で、行方不明者は257人。3市町の行方不明者は696人。いずれもこの1年間で変動はなかった。
住家被害は石巻市で2万44棟が全壊、1万3050棟が半壊。東松島市は全壊5519棟、半壊5558棟。女川町は全壊2924棟、半壊349棟。
きょう3市町追悼行事
東日本大震災の発生から14年となる11日、石巻地方2市1町は犠牲者を追悼する式典や集いを開く。
■石巻市
石巻市は午後2時40分~午後4時、追悼式を石巻南浜津波復興祈念公園内の市慰霊碑前で開く。遺族代表や来賓ら約70人が出席予定で、発生時刻の午後2時46分に黙とうをささげる。サイレンは昨年と同様、震災を想起させないよう低い音にする。
斎藤正美市長が式辞、来賓が追悼の辞を述べ、遺族代表や参列者が献花する。一般の献花は終日受け付ける。昨年は、式典中は会場内に別に献花台を設けたが、今年は式典中も慰霊碑前で献花できる。
市内各地区にも献花場を設ける。河北総合支所、雄勝総合支所、遊楽館、桃生総合支所、北上総合支所、牡鹿保健福祉センターで、時間は午前8時半~午後5時。
■東松島市
東松島市の追悼式は午後2時半から約1時間、市コミュニティセンターで開催する。
無宗教形式で実施し、400人程度の参加を見込む。渥美巌市長が式辞し、発生時刻に黙とうする。来賓が追悼の辞を述べた後、遺族ら参列者が献花する。
駐車場はセンターのほか、市役所、矢本保健相談センター、矢本東保育所前を利用できる。
■女川町
女川町は昨年と同様、式典は開かず「追悼のつどい」として自由献花形式で実施する。献花は午前9時~午後4時。町役場敷地内の慰霊碑前に献花場を設ける。
発生時刻に防災行政無線でサイレンを鳴らし、須田善明町長があいさつする。庁舎1階のエントランスホールには、震災前の町並みや復興の歩みを記したパネルを設置する。
震災遺構「門脇小」「大川小」、今夜ライトアップ
石巻市の東日本大震災遺構「門脇小」と「大川小」で11日、夜間のライトアップが行われる。
震災発生から14年を迎えるのに合わせ、両遺構で実施している関連事業の一環。午後5~8時に、LED(発光ダイオード)照明でそれぞれの校舎を照らす。
門脇小と、大川小近くの大川震災伝承館を夜間特別開館する。門脇小は夜間の入館料が半額になり、午後6~7時に館内解説ガイドツアーがある。参加には入館料が必要。定員30人で先着順。
門脇小では4月11日まで、石巻南浜津波復興祈念公園内にある「がんばろう!石巻」看板の初代看板を展示している。現在の看板は3代目。
連絡先は門脇小が0225(98)8630、大川小は0225(24)6315。
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