「てんでんこ」震災後に浸透 被災3県6割、全国でも4割 地方紙15社共同アンケート

 東日本大震災で注目された教訓「津波てんでんこ」について、震災後に言葉と意味を知った人が全国で4割を超えることが、河北新報社など地方紙15社による共同アンケートで分かった。岩手、宮城、福島の被災3県は57・8%で全国平均を上回った。半面、3県以外では言葉を聞いたことがない人が41・0%に上り、震災の教訓が共有されていない現状が浮かんだ。

 被災3県では、19・3%が「震災前から言葉と意味を知っていた」と回答。震災後に理解した人と合わせて約8割に達した。「震災後に言葉を知ったが、意味は知らない」は被災3県6・0%、3県以外8・1%だった。

 一方、逃げた後の集合場所を家族で決めていない人は被災3県51・8%、3県以外60・9%と過半数を占めた。携帯電話の不通で連絡が取れなかった震災の経験が生かされていないのが実情だ。

 災害時の避難場所を「知っている」は被災3県92・8%、3県以外85・3%といずれも高く、備えの意識が浸透していた。ただ居住地の災害リスクの把握に欠かせないハザードマップの内容を「理解している」は被災3県45・8%、3県以外36・9%で、いずれも半数以下だった。

集合場所決めて

◇佐藤翔輔東北大准教授(災害情報学)の話
 津波てんでんこは、家族ら大切な人がきちんと逃げることを前提としなければ、実行できない。自分だけが助かるのではなく共助の意味を含めた教えとして、被災3県以外にもっと浸透してほしい。

 家族がばらばらに避難する以上、集合場所を決めておくことが大切だ。携帯電話が使えなくなり、再会や安否確認に時間がかかった震災の教訓でもある。被災3県を含めて「決めていない」が過半数だったのは、大きな問題といえる。

 ハザードマップは内容を理解した上で、災害種別に対応する避難場所を把握したい。マップに記された浸水範囲などの想定はシナリオの一つに過ぎず、実際は上回る可能性があることも震災の大事な教訓だ。

津波てんでんこ 津波の時は一人一人がてんでんばらばらに逃げろという三陸地方の教え。実践すれば他者の避難を促す効果があるなど、自助だけでなく共助の重要性も強調する言葉とされる。大船渡市の津波研究家、故山下文男さんが1990年にあった津波防災シンポジウムで紹介し、東日本大震災後に広く知られるようになった。

「震災も関心」全国でも8割 被災3県「復興を実感」5割

 地方紙共同アンケートで東日本大震災への関心度を6段階で尋ねたところ、岩手、宮城、福島3県以外で「非常に関心がある」という最高の「5」と次の段階の「4」を合わせて80・3%に上った。岩手、宮城、福島の被災3県では「5」が75・9%で「4」との合計は9割を超える。10年たった今も、全国的に多くの人が関心を持ち続けていることが分かった。

  「震災から何年間ぐらい震災を話題にしたか」について、被災3県の76・5%、3県以外の59・6%が現在に至る「9年」と回答。3県以外は「3年」(9・6%)と「5年」(12・7%)が他の年より5ポイント以上高く、「節目」が影響したとみられる。

 「被災3県の復興が着実に進んでいるか」との質問については「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計が被災3県53・0%、3県以外28・2%と倍近い開きが出た。三陸沿岸道(仙台-八戸、359キロ)の整備が進み、災害公営住宅が各地で完成するなど「復興」が目に見える形で実感できる被災3県との差が浮き彫りとなった。

 震災をきっかけに生まれた被災3県との関わりも聞いた。3県以外の主な回答は「募金や被災地の物品購入」(50・2%)「ボランティアや旅行で訪問」(21・2%)。「特に変化はない」は被災3県32・5%、3県以外36・9%だった。

 震災による個人の意識や行動の変化に関し、被災3県は「自分のことは自分で守るべきだと思うようになった」(62・0%)が最多。「家族や友人ら身近な人を大切にするようになった」(50・6%)も半数を超えた。3県以外は「社会的な問題に関心を持つようになった」(48・3%)がトップだった。

 震災後の社会に対する認識は「弱い立場の人を助ける意識が強くなった」「人々や地域の結び付きが強くなった」が上位。「特に変化はない」は被災3県12・7%、3県以外15・1%だった。

「語り継ぐ」 重要

遠藤薫学習院大教授(社会学)の話 
被災3県以外も震災への関心が高い。日本全体に大きな衝撃を与えた出来事であり、10年では記憶は薄れていない。自由記述でも「忘れてはいけない」との文言が目立った。

 現在も全体で6割超の人が震災を話題にしている。ただし、相対的には若い年代で話題にしなくなっている。震災後生まれの世代が増える中、いかに語り継ぐかが重要な課題だ。

 意識や社会の変化に関する回答からは、自助と共助の両方を重視する傾向がうかがえる。困っている人には手を差し伸べるべきだという思いやりと、自分のことは自分で解決するという心構えが共存している。「他者には優しく、自分には厳しく」という道徳心も読み取れるのではないか。

[調査の方法] 今回のアンケートは、地方紙が無料通信アプリ「LINE」などを使って記者と読者を結び、暮らしの疑問や地域課題の解決を目指す「オンデマンド(求めに応じた)調査報道」の一環で実施した。協働企画として40都道府県の1699人から回答を得た。うち被災3県は166人。一般の世論調査とは異なる。河北新報以外で参加した14社は次の通り。北海道新聞▽東奥日報▽岩手日報▽神奈川新聞▽新潟日報▽福井新聞▽北日本新聞▽信濃毎日新聞▽岐阜新聞▽静岡新聞▽京都新聞▽高知新聞▽西日本新聞▽琉球新報

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