仙台中心部でひき逃げ、トラック走り去る 「犯人見つけて」被害女性が悲痛な叫び
「ひき逃げ犯を見つけてほしい」。ひき逃げ事件に遭い、全身12カ所を骨折した仙台市青葉区の女性(61)から「読者とともに 特別報道室」に悲痛な声が寄せられた。取材を進めると、被害者が直面する理不尽な苦境が浮かび上がった。
「治療費が支払えなくなるので1週間で退院した」
女性は3月18日午前7時ごろ、仙台市青葉区片平1丁目の片平丁通でバイクを運転中にトラックと接触して倒れた。頭を打ったほか、鎖骨や肩甲骨、あばら骨の計12カ所を骨折し、全治6カ月と診断された。
現場は片平丁小に面した見通しのいい片側1車線の直線道路。目撃証言などによると、緑色のトラックが女性のバイクを追い越そうとした際に接触し、南東側の五橋方面に走り去った。
女性は搬送先の病院で治療費が高額になることを告げられ、1週間後に19万円を支払って退院。直後は体が全く思うように動かず、トイレに立ち上がるのにも20分近くを要したという。今も体に痛みが残り、車が通る音がするだけで心拍数が上がる。仕事は事故当日から休んだままだ。
女性は「一日中ぼうっとしていることが多くなり、感情が湧いてこない。いつもの自分とは違う感じがする」と話す。
ひき逃げ事件の場合、加害者側の保険が使えない。被害者が加入する任意保険にひき逃げ被害の特約がなければ、公的保険制度を除く治療費は当面、被害者の負担になる。
治療が終わってから政府の保障事業に頼ることができるが、給付開始まで申請から3カ月ほどかかる。給付上限は傷害が120万円、後遺障害が4000万円で、自動車損害賠償責任(自賠責)保険と同程度だ。
女性のようなケースは例外ではなく、頻繁に発生している。政府保障事業に基づく2018年度のひき逃げ事故への救済は全国で545件。宮城県警によると、20年は県内で59件のひき逃げ事故が起き、うち16件で摘発に至らなかった。
県警交通指導課は「防犯カメラやドライブレコーダーの普及で摘発率は上がっている。事故の軽重にかかわらず、『逃げ得』は許さないとの思いで捜査する」と強調する。
仙台中央署は、女性が被害に遭ったひき逃げ事件の目撃情報を求めている。
(勅使河原奨治)
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