自粛の1年、どう乗り越えた? 河北新報SNSアンケート(詳報)
新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込もうと、国が緊急事態宣言の対象地域を宮城県を含む全都道府県に広げてから約1年がたちました。河北新報社は会員制交流サイト(SNS)の無料通話アプリLINE(ライン)で読者の方々に自粛生活の実態についてアンケートを行いました。皆さんはこの1年、どう振り返りますか。
(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)
241人から寄せられた回答には、長引く社会・経済活動の制限によって、心身の不調を訴える声が多くつづられていました。感染リスクを下げる行動を取って生活様式を見直し、事態を乗り越えようとするさまざまなアイデアもありました。
▼コロナ禍で、したくてもできなかったことを教えてください
複数回答で「旅行・帰省」(79・7%)が最も多く、「外食・飲み会」(72・6%)「イベント・祭りの参加」(62・2%)「趣味の活動」(41・9%)と高率で続きました。回答者の97・3%が何らかの支障を感じています。
発見や刺激なく閉塞感
▼精神的、肉体的なきつさを感じましたか?
この問いには、ストレス解消法がなくなったことを嘆く声が相次ぎました。
「コンサートやライブへの参加ができなくなったり、遠方の友人と会えなくなったりと余暇を楽しむものがなくなった」(仙台市 40代自営業男性)
「ふらっとドライブに行くのが楽しみだったが、不要不急の用事なので自粛」(宮城県角田市 60代主婦)
「初めの頃は手の込んだ料理をしてみたり、DIYで棚を作ったりして楽しむことができていたように思うが、最近はネタが尽きた」(仙台市 40代自営業男性)
「家庭や仕事から離れた人たちと触れ合うことによる新しい発見や刺激がなくなり、それが閉塞(へいそく)感になっている」(仙台市 40代公務員男性)
「インプットばかりの毎日。アウトプットがあまりできない」(宮城県名取市 30代パート・アルバイト女性)
収入減って、追い込まれる
仕事に影響が及び、経済的な悩みが広がっています。
「元々リモートワーカーなので生活は何も変わらないが、仕事が減って収入面がつらい」(仙台市 40代自営業男性)
「会社が観光客相手の仕事なので収入が減った。昨年から約3週間単位で休業を繰り返している。バイトしても良いと言われても、短期のバイトなどないし、精神的金銭的にアウトです」(宮城県松島町 50代会社員女性)
「昨年3月でパート契約が終了し、予想外に収入がなくなった。パートを探すが、感染リスクの高い接客業や介護職ばかり。子どもが学校で使う物などを優先的に買い、私たち夫婦の物を後回しにして、何とかやりくりしている」(仙台市 40代主婦)
飲食店「いじめないで」
仕事によってストレスの種類もさまざまなようです。
「医療従事者なので、感染しないように気を使うのに大変。県外の家族に会えないのは試練だった。家族は私の身を案じ、退職を望んでいたが、逃げ出すようでどうしてもできなくて…板挟みがつらかった」(名取市 50代パート・アルバイト女性)
「飲食店を経営している。時短営業要請に協力しているが『協力金もらっているんでしょ』ということを他の業種から言われる。売り上げが減って苦しんでいるのに世間と行政の目がきつい。国は飲食店を感染の温床みたいに言うし、間に挟まれている私たちは何をしてもきつい。いじめないでほしい」(仙台市 40代自営業男性)
「飲食店で勤務している。お客さんにマスクなしで平気で話しかけられたり、せきをかけられたり、ストレスを感じる」(宮城県多賀城市 50代パート・アルバイト女性)
うつしたら、どうしよう
新型コロナウイルスにかからない、うつさないことも重圧となっています。
「常に追い詰められている気分で疲れた。自分自身が基礎疾患を持つ高齢者だが、それ以上に地域の方々や同居家族への感染源になるわけにはいかないと思って、家にこもる日が多かった」(宮城県塩釜市 60代定年退職男性)
「自分が感染してしまうと、気付かぬうちに職場のメンバーに感染させてしまう、との緊張感を常に持ち続けなければならないつらさがある」(宮城県利府町 70代会社員男性)
「コンサートのために東京や北海道に行っていた。自分一人なら行けるが、万が一、家族や職場、家族が通う学校に迷惑を掛けたらと思うと。それが1番大きい。コロナ前と比べると収容人数が半分以下などになっているが、やはり気軽には行けない」(仙台市 40代主婦)
外で遊ばせたいのに
親たちは子どもの行動を制限することを苦しく感じています。
「2児を育てている。去年は長子の幼稚園入園の延期もあって外で遊ばせることがとても難しく、子どもも大人も精神的に疲弊した」(仙台市 30代主婦)
「家族といる時間が増えたことが嫌ではなく、小さい子ども2人をどこにも連れていけないジレンマと、子どものストレスが負担になっている気がする」(宮城県岩沼市 40代自営業男性)
「気軽に出かけられないことへのストレス、子どもを外に連れて行ってあげられないことへの子どものストレス。子どもに旅行などでいろいろな経験をさせてあげられない」(仙台市 20代公務員女性)
「一生に一度」も諦めた
大切な行事やイベントを逃した悲しみは簡単に割り切れません。
「昨年6月、コロナ禍の中、息子を出産した。コロナのせいで祖父母へのお披露目、お宮参り、お食い初めなどさまざまなイベントができなかった。息子にとって一生に一度しかないことだが、仕方ないと諦めざるを得ないことがつらかった」(仙台市 30代会社員女性)
「子どもたちの卒業式・入学式がどちらもなく、記念すべき式典が行われなかった。また、それらに立ち会えなかった事が非常に残念」(仙台市 50代主婦)
「子どもが中学3年だった。修学旅行中止、部活の大会中止、各行事縮小など、子どもががっかりする姿を見るのがつらかった」(岩手県一関市 50代主婦)
外出せず体重8キロ増
健康に悪影響が及ぶ場合もあります。
「釣りの会も中止が続き、外に出る事がめっきり減ったため、体重が8キロも増え、血圧もかなり高くなってしまった」(宮城県七ケ浜町 60代自営業男性)
「精神的ストレスがひどく、1年間で体重が減少し、更年期障害もひどくなった」(多賀城市 40代パート・アルバイト女性)
「ストレスか? 腹が立つ事が多くなってきた」(仙台市 70代無職男性)
「敏感肌のため、マスクをする口元が荒れ、消毒でのあかぎれがひどい」(仙台市 40代主婦)
予防意識の差にいらいら
感染防止に対する意識の差がいら立ちの原因となります。
「感染予防に気を遣い、旅行もイベントも飲み会も我慢してきたのに、全く気にせず生活している人々にいらいらして、余計にストレスがかかって、つらい」(仙台市 40代会社員女性)
「昨年度、私たち学生は長期にわたる休校や校内でのイベントの中止、規模縮小を余儀なくされた。学生が我慢して、つらい思いをしているのにもかかわらず、何の対策もしていない大人がいることに、やるせなさを感じた」(仙台市 10代男子学生)
「パートナーからの行動制限に窮屈を感じた」(仙台市 70代無職男性)
対人ストレス減った
一方、新たな生活様式を肯定的に捉える意見もありました。
「日頃からあまり活動的な方ではなかったし、大好きなスイーツやパンなどを買いに行くことはできたので、精神的・肉体的にきついことはほとんどなかった。むしろ、人と無理して付き合わなければならないことが少なくなったので、私には良かった」(仙台市 40代主婦)
「仕事にテレワークが導入され、通勤の疲労が解消された。子どもが休校中でテレワークの日は、子どもとの時間がたっぷり取れて、フルタイムだと味わうことが少ない貴重な時間を過ごせた」(仙台市 40代会社員女性)
「面倒くさい集まりがなくなって、精神的苦痛は減った」(宮城県丸森町 40代パート・アルバイト女性)
心身のつらさを「特に感じない」などとした回答は16・8%でした。
▼代わりに始めたこと、はまったことはありますか?
複数回答で「料理・DIYなど一人でできる室内活動」(33・2%)が最も多く、「ランニング、筋トレなどの運動」(18・7%)「登山、キャンプなどの野外活動」(8・3%)と続きました。
その他は「オンラインを使った講座、勉強会、交流会」「資格取得の通信講座」「家事の分担」「韓国ドラマ」などでした。「仕事帰り、夕方に1人で1杯だけ飲んで、何食わぬ顔で家に帰るのが楽しい」(仙台市 40代会社員女性)「これまで通ったことにない道を発見して散歩する」(仙台市 60代無職女性)という意見もありました。「特にない」という声は28・3%でした。
食生活見直すきっかけ
▼自粛生活を乗り切るために工夫したことはありますか? 気付いたこと、あなた自身が変わったことを教えてください
外に出て、人に会うことが制限された分、自身の生活スタイルを見直すきっかけになったようです。
コロナ禍でこれまで以上に注意が向いたのは、やはり健康でしょうか。
「食生活の見直し、改善、野菜中心の食事。その結果、血圧は190以上あったのが、現在は130前後まで下がってきた。薬を使わずに下がっているので、病院からビックリされた」(宮城県七ケ浜町 60代自営業男性)
「食生活を見直すきっかけになった。特に、みそ、しょうゆなどの発酵食品を多く取ったり、野菜を使った和食を日頃から食べるようになり、健康に気をつけるようになった」(仙台市 30代主婦)
「自身の身体について、より深く考える機会となった。ダイエットで15キロ減らし、1年間キープできた」(仙台市 40代会社員男性)
外食我慢しプチぜいたく
外食できないことによる新たな発見もあります。
「スーパーなどで普段買わないお値段のお総菜、お弁当、パン、デザートなどを購入して、おうちでお茶やコーヒーでゆったり頂く時間が幸せ」(宮城県利府町 50代主婦)
「友人たちとの食事や飲み会はやめたが、たまに1人で黙食すると、食事に集中するためかおいしさがしっかり分かった」(宮城県富谷市 50代パート・アルバイト女性)
「週に1度はカレーの日、毎週水曜日はちらし寿しを買う、毎週日曜日は食材買い出しの日など、週の中にメリハリをつけた。毎日が日曜日の自粛生活にこのアイデアはかなり良かった」(仙台市 40代主婦)
「断捨離」でわが家を快適に
家の中の物を整理する「断捨離」も人気です。
「今まではとにかく外に出掛けたいタイプだったが、家にいる事が長いので、憧れていたミニマルな暮らしに近づけるため、自分のペースで断捨離している。いかに不必要な物の中で暮らしていたか気付けた」(仙台市 40代会社員女性)
「こんなに時間があっても整理できないなら、今後一生できないとも思えた」(宮城県富谷市 50代パート・アルバイト女性)
「わが家を快適にすることがいかに重要か痛感した」(宮城県名取市 50代パート・アルバイト女性)
ステイホームをいい思い出に
家族で過ごす時間を大切にすることが増えました。
「今までは平日は共働き、週末は子供の習い事と、家族で過ごす時間が短かったが、コロナ禍で必然的に長くなった。休校期間中に子どもへ家事を教えたおかげで、お手伝いを進んでしてくれるようになり、とても助かっている。旅行や外出をしなくとも家族の思い出をたくさんつくり、ステイホームを楽しみたい」(仙台市 30代会社員女性)
「毎日のように、子どもたちとお菓子作りをした。私の趣味だったが、忙しさに紛れて普段はできていなかった。作る度に記念写真を撮った。悪い記憶の中に、楽しかった達成感みたいな感情も残っている」(仙台市 40代主婦)
テレワーク、結構いいかも
インターネットの恩恵を感じる場面が多かったです。
「社会人になって30年近く、仕事は会社に出勤してやるものと思い込んでおり、テレワークなんて絶対に無理と思っていたが、やってみたら案外ちゃんとできるし、何よりも通勤時間とストレスが解消されたことは大きなメリットだった」(仙台市 50代会社員男性)
「ユーチューブなど動画をよく見るようになった。料理を見て、子どもたちと作ってみた。動画のおかげで家族の会話が増えた」(宮城県富谷市 40代パート・アルバイト女性)
「趣味の映画が見にいけなかったので、定額制の動画配信サービスに入り、映画や昔のドラマを楽しんでいる。ただ、映画館が潰れてしまわないか危惧している」(仙台市 50代パート・アルバイト女性)
幸せはすぐそばにある
新たな価値観を築くきっかけになったとの声もあります。
「外出や外食をしなくても、身近なものに目を向けると、美しいものがたくさんあって、癒されたり楽しい気持ちになったりできるんだと気付かされた」(宮城県登米市 50代パート・アルバイト女性)
「美容院に行くのが難しいので、ユーチューブで動画を見ながらセルフカットするようになった。意外と楽しんでできるようになり、苦痛ではなくなって、完璧を求めなれば良し、とする割り切り感を覚えた」(仙台市 50代パート・アルバイト女性)
「SNSなどの情報があふれていても、自分に関係があるかないかを適切に判断し、周りに流されて不必要なことに手を出さないこと」(仙台市 50代無職男性)
今で精いっぱいという人も
一方、乗り切るという考えに否定的な意見もありました。
「収入が激減し、お金がかかることはできない。飲食店関係以外の業態でも影響を受け、窮地に立たされている人はたくさんいることを知ってほしい」(仙台市 50代自営業男性)
「乗り切る? 今は頂上が見えない山登りをやりたくなくても無理やりさせられてる状況。ひたすら我慢してるのが現状」(宮城県岩沼市 40代自営業男性)
「父が大腸がんステージ4だったため、怒濤(どとう)の日々で工夫とか考えなかった。ただただ家にコロナを持ち込まない。父にうつさない! 目標はコレだけでした」(宮城県柴田町 40代パート・アルバイト女性)
「気持ちが落ち込みやすくなった。人が近すぎるのが無理になった」(宮城県多賀城市 40代主婦)
調査は17~20日、「読者とともに 特別報道室」のLINEで友達登録する人に実施し、241件の回答が寄せられました。
ご協力ありがとうございました。
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