高校の部活 自粛か時短か 宮城県と仙台市、足並みそろわず 「不公平」との声も
「なぜ高校の部活は自粛しないのでしょうか。不安な気持ちしかありません」。宮城県立高に通う生徒の切実な声が「読者とともに 特別報道室」に届いた。新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」の適用対象となった仙台市内の高校を取材すると、生徒たちの「最後の夏」への複雑な思いに加え、県教委と市教委の間で足並みの乱れも浮かび上がった。
重点措置が適用された5日以降、市内の県立高の多くは部活動の時間を通常より30分~1時間程度短縮した。各校は3密回避や手指消毒などを徹底。他校との練習試合を自粛し、校内練習のみに制限している。
県立の泉松陵高(泉区)では各部が通常より短い平日2時間、休日3時間の活動時間を厳守する。接触プレーが避けられないバスケットボール部は、体育館の換気や小まめな消毒などの対策を続ける。部長の3年中村太一さん(17)は「接触には怖い気持ちもあるが、最後の夏だから悔いは残したくない」と練習に打ち込む。
ソフトテニス部はボールの消毒はもちろん、ショットを打つ時の掛け声も自粛している。3年の女子部員(17)は「公式戦があれば集まる人数が多く、不安だ。でも、やっと自分の理想の形に近づきつつあるテニスを試したい気持ちもある」と心情を明かす。
公式戦を見据え、通常練習を再開した学校もある。市立の仙台商高(泉区)は3月25日からの時間短縮をやめ、今月13日から少しずつ戻している。野球部では着替えを学年ごととし、帰宅時間も分けて3密を避ける。
主将の3年松本陽葵(はるき)さん(17)は「コロナ以前のような練習は到底無理だけど(春夏の県大会が中止になり、代替大会のみだった)昨年の先輩方のためにも、しっかり準備して大会で勝ち進みたい」と意気込む。
取材を進めると、県教委と市教委の方針にずれがあることも分かった。
県教委は5日、「地域の感染状況に応じて時間短縮の検討もお願いする」との文書を県立各高に通知。一方、市教委は3月25日~4月11日の活動自粛を求めたが、その後は感染対策を徹底した上で、校内練習なら通常実施を認める通知を出した。
保護者から「不公平ではないか」という声が寄せられる県立高も少なくない。市内のある県立高の教頭は「現場では保護者からさまざまな声が寄せられ、その都度方針を説明している。県教委と市教委は足並みをそろえ、もっと連携してほしい」と嘆く。
(岩田裕貴)
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