防災研究の使命、聖火に誓う 東北大災害研所長の今村さん

災害公営住宅や自主再建の家々が並ぶ街を走る今村さん=東松島市(代表撮影)

 東日本大震災で被災した東松島市で、東北大災害科学国際研究所長の今村文彦教授(59)が東京五輪聖火リレーのランナーを務めた。「全国の思いをつなぐリレーに改めて追悼の祈りを重ねたい」。トーチに願いを込め、災害公営住宅や自主再建した家々が並ぶ街を走った。

 聖火を運んだ内陸部の「あおい地区」は、約600世帯が暮らす市内最大の防災集団移転団地。震災後生まれの子どもたちに沿道から手を振られ、笑顔で応えた。「10年の時の経過とともに、何げない日常が被災地に戻ったことを実感した」

 震災前、市のハザードマップ作製に関わった。大津波は浸水想定範囲を超え、市内の犠牲者は関連死を含めて1155人に上った。

 現地調査で津波の威力に言葉を失った。同市野蒜地区では、マップ上は安全なはずの自宅2階にいた娘を亡くした女性と会い、打ちのめされた。マップには津波が想定を上回る可能性について記していたとはいえ、自らを責めた。

 苦しい日々の中、避難訓練などの備えが被害を一定程度抑えていたことも明らかになり、次第に立ち直った。「反省点を改善して防災を前に進める」。固く誓い、研究に打ち込んできた。

 ランナーに選ばれ「地域が復興した姿を世界に見てもらい、支援への感謝を伝えられる」と意気込んだ。「ただ新しい街並みが造られたのではない。つらい経験を忘れず、津波による被害を繰り返さないとの決意が形になったことを知ってほしい」と強調する。

 五輪開催に影を落とす新型コロナウイルスも災害の一つと捉える。「あらゆるリスクに強い社会をつくらなければいけない。東松島を走り、気が引き締まった」。防災の研究と実践という使命に向き合う思いを新たにした。

関連タグ

河北新報のメルマガ登録はこちら


企画特集

先頭に戻る